「唯っ!」

「あ、楓。」


カバンを肩にかけて、ひらひらと走ってくる楓。
無邪気な子どもみたいだ。

私は、にっこり微笑みながら彼女を待つ。


「おっはよ。」

「おはよ!」


屈託のない笑みを浮かべる楓。
彼女と友達になってから、私は教室でも一人ではなくなった。


「ねえ、聞いてよ唯!昨日ね……」


朝の教室で楓と笑い合う。
このひとときが、私にとってどれほど心安らぐ時だったか。
楓は分からないと思う。




彼女は、本当の一人ぼっちを知らないから。




この時、私はなぜかそう思っていたんだ。