楓と別れた後、寂しさが押し寄せてきた。

初めて友達ができた嬉しさ。
でも、それを上回る、失う予感。

楓も、先生も。


不治の病、って何だろう。

毎日病院に行かなくてはならないほど悪いなんて。

あとどのくらい、生きられるのだろう。

卒業まで先生をしていられるのだろうか。


疑問が山のようにあって。
でも、先生に訊けることなんて、ひとつもなかった。


だから、先生に初めて送ったメールは、ものすごくどうでもいいことだったんだ。



To:天野陽先生
件名:笹森です。

先生、こんばんは。
今日の夕ご飯は何ですか?



送信ボタンを押した後、唇を噛みしめた。

私たちの関係に肩書はなくて。

本当に尋ねたいことを尋ねることは、私には許されないから―――



ケータイを仕舞って歩き出すと、冬の空はもう真っ暗だった。