その写真は、いつか見た写真ではなかった。

写真たてのガラスにも、ヒビは入っていなかった。





「先生――――――」





溢れ出した涙が、写真の上に落ちる。

はらはらと、温かい涙がとめどなく落ちて。





「天野先生!」





思わず叫ぶと、私の声が部屋中にこだました。





そこに映っていたのは、玲さんでも、子どもさんでもなかった。






『平成22年度 入学式』





そんな看板の前で、並んで立つのは―――――






どうして、忘れていたんだろう。




どうして、





写真の中で私の隣に立っているのは、紛れもなく天野先生なのに。