「頭痛くなってきた……」


『風邪? ここんとこ冷えるからねぇ』


「……もういい」


 二時間後の午前五時ならまだ日の出前で深夜のように真っ暗なはずだ。その時“渡瀬会”が入港させるもの、それは全ての元凶に違いなかった。


『沙樹ちゃんはどうするんだ?』


「……連れて行くわけないだろ」


『そうだよねぇ、いくらなんでも危険か……』


 電話の向こうで波多野が煙草を吸っている気配がする。逢坂は部屋に入ると、今更肌に寒さを感じて身を震わせた。


「俺が全部終わらせてやる“渡瀬会”も、あの男も……全部」


『逢坂……』


「なんだ」


『死ぬなよ?』