その日の夜、白露達はまた白良の家に泊まることにした。

どういった風のふきまわしか、白露がもう少しこの家にいると言い出したのだ。


「今日は村のうるさい連中が来なくてほっとしやした~」

千尾丸は大きなあくびをしながら白露を見た。

「旦那~?機嫌悪いんですかい?」

三人しかいないのに頭からすっぽりと被衣を被ったまま、うんともすんとも言わない。

「具合でも悪いんですか?」

白良が心配そうに近寄って来た。

「いんや~、ただ拗ねてるだけみたいです」

「拗ねる…?」

俯いている白露の表情を見ようと、白良が被衣を覗き込んだ時だった。

「きゃあ!?」

素早い動きで白良の腕を掴んだ白露。

彼の金色の瞳が妖しく揺らめく。

白露は白良を引き寄せると、彼女の頬を両手で包み込み、その黒い瞳に己を映し出した。


「容易く涙を見せるな」