「……ふう」
ゆっくり深呼吸をして、一歩、一歩、ソファーに近付く。
覚悟を決めて、ゆり。
お母さんだって言っていたでしょう、これを克服しなければいけないって。
足が震える。
近付いちゃダメだって、心でささやく声が邪魔をする。
でも、そうしたら御影くん風邪ひいてしまうかもしれない。
ゆっくり近づいて、私のできる範囲まで近づく。
ちょうど、ソファーで横たわって寝息を立てる御影くんの1メートル前。
「み、御影くん起きて」
「……ん……」
御影くんは全く起きる様子を見せないで、少しだけ顔をゆがめて
寝返りを打つ。



