「ったく、オマエなー俺をパシリかなにかと勘違いしてるんじゃないの!?

 廊下寒かったんだけどっ聞いてんの?」


「……」


帰り道、高梨に怒られながら俺は彼女の言葉を思い出す。



『貰ったのに、食べないんですか』


『振るならプレゼントをもらうなんて、

期待させる行為、やめたほうがいいんじゃないですか』


『───次は、ちゃんと人のこと考えてあげてください』


ふと、制服のポケットに手をかざすと、あのクッキーがしゃか、と動く音が聞こえる。


ポケットから取り出して、ラッピングをほどくと一つつまんで、


口の中に放り込んだ。



「……甘い」


けれど、その甘さは不思議とそんなに、嫌いじゃなかった。