「はいはい、分かってるよ」

「……むー……」


ゆりはすねたように、口を尖らせてそっぽを向いてしまう。あーほんと、なんでこんなに可愛いんだろ。



「今日は、お父さんに報告するんだから、そんな調子じゃ困ります」


「ごめんごめんすねた?」


「すねてませんっ」


ゆりはますますすねた表情で、俺を見上げると───それから、小さく笑った。


「───もうすぐ新しい父さんができますって言ったら、お父さんはすねちゃうんだろうね」


「ま、そうかもなゆりみたいに」


「わ、私はすねてないっ」


むすっとした顔で、ゆりはそっと俺に手を差し出して、そっと口を綻ばせながら、言った。


「行こう、皐月くん」


「ん」



その笑顔は、あまりに甘く、とろけるように───朗らかで。


握りしめると、ほのかに温かな手のひらに、安心する。