待ち合わせより、数分も前なんだから、ゆりいないだろうなと───病院の自動ドアを通り抜けて、俺は立ち止まる。


ふわりと揺れる、白いワンピースに淡い桃色のカーディガンを来た、彼女の姿が、見えた。


……やっぱり、ゆりはゆりか。

20分も前にきて……ったく、本当に。



きっと、話しかけたら、ゆりは


「ちょ、ちょっと時間を見間違えて早く来ちゃっただけだから」

とか、

「べ、別にそんな張り切っているわけじゃないんだから」


ってすねたように眉を寄せて、赤い顔で否定してくるに違いない。



なら、ちゃんとゆりの期待に応えて───真っ赤にさせてやんないと。



くすり、と笑って───俺は、愛しい彼女の肩をぽんと、たたいた。



「さ、皐月くんっ?ま、まだお母さんとの面談をしてるんじゃ」


「ゆりが律儀に待っていてくれるような気がしたら、出てきた。

 案の定、そうだったけど。もしかして楽しみにしてた?」


「ち、違いますっ!それは、その……しょ、翔太が早く行けって言うから……っ」