「ここの校舎の裏に、山があるの知ってる?」

皐月くんは暗がりの廊下の中、私の手を握って歩きながら、そう聞いてきた。


「……あ、うん。

 でもあそこ立ち入り禁止だよね?学校の所有ってことに一応なっているし」


「ま、そうだな」


「えっもしかして、今からやまに───っむぐ」


驚いて、大きな声を出してしまった私の口を慌てて皐月くんが塞いだ。


至近距離で、皐月くんと目が合う。


どくり、と心臓が大きく跳ねるのが、分かった。



「静かにしないとばれるよ」


こくこく、と大きく頷くと、皐月くんはすっと私の口から手を離して、また歩き始める。


校舎の裏側までやってくると、真っ暗闇に、何も先が見えない、山の上り口が永遠に続いているのが、見えた。


立ち入り禁止と書かれた、壊れかけのフェンスでつくられたドアを皐月くんが開ける。



「しばらく、上るから」