そして───数日後、ゆりの父親は、亡くなった。
ゆりは、泣かなかったという。
まだ〝約束〟をしているから、きっとお父さんは戻ってくると頑なに言って。
そして、今も待ち続けている。
ずっと、ずっと、お父さんが家に帰ってくるのを、心の中でずっと。
***
「……誕生日?」
「はい」
茜さんにそう聞くと、困ったように顔をしかめた後、思い出したようにくすりと、笑って、
「あの人、不器用でゆりとの距離の取り方が分からない、とか言ってね。
毎年毎年律儀に誕生日プレゼント買っていたのに、渡せないでいたのよ」
「……そう、なんですか」
ゆりの、誕生日は7月の28日。
きっと、何か残しているはず。
たぶん、その何かに───ネックレスが、あると思う。



