けれど、とうとう願いは叶わなかった。
ゆりの父親は、仕事の転勤だと嘘をついて、ある日の朝───家を抜け出した。
そう、それは───大きな手術をするため。
ゆりは、それを知っていて、きっと玄関を出る父の背中を追ったに違いない。
そして、ゆりの父親は言った。
ごめんな、と。
約束を守れなくて、ごめんな、と。
そして、しばらくしてから病院から電話が入ってきた。
もう、白井さんは長くないでしょう。
だから、来ていただけませんかと。
茜さんは、ちょうどそのころ翔太をひとりで産んで、子育ての真っ最中だったそうだ。
慌てて飛んでいくと───ゆりの父親が白ベットで横たわっていて。



