やばい、可愛すぎ。



***


茜さんから、少々の話を聞いた。

まず、ゆりの父親───白井健二という人の話。

俺は、断片的にしか知らない。


それは、あの日、俺が熱でうなされたとき、ゆりが話してくれたもの。


───ゆりの父親はもう、この世にいない。


ゆりが小学生のころ、翔太が生まれる前に、亡くなったのだと。


当時、茜さんは翔太を身ごもっていて───ゆりの父親は、気遣って、本当に最後の最後まで病気のことを話さなかったという。


「あの人は、とても不器用な人だったの。

 ……それに、人のことばかり気遣うような大ばか者でね」


茜さんは、そういって目を伏せながら、悲しそうに微笑んでいた。



そして、そのことに唯一気づいたのが───ゆり、だった。




ゆりは、誕生日プレゼントをくれた父が、もう長くないことを知っていた。

けれど、きっと治ると信じて───思い続けて、きた。