あの日───私は、小さくなっていく背中に叫んだ。
お父さんなんて、大っ嫌いだと。
約束も守れない人なんて、大っ嫌いだと。
娘に生まれてこなければ、よかったと。
本当は、大好きだった。
本当は〝約束〟を守ってくれようとしていたことを、知っていた。
本当はお父さんの子でよかったと、言いたかった。
「……な、んで……っ。
わた、しは……っあんなこと、言っちゃったんだろう……っ!
本当は、好きだったのに……っ本当は、本当は……っ
だから……お父さんが帰ってくるって……信じてっ、いっぱい我慢した……っ!」
『……』
携帯を握りしめる力が、強くなる。
苦しくて、その痛みを誤魔化したくて掻き消したくて、より一層大きくなる。
「……でもっ……〝約束〟は……っもう、もう、守られない」
───そう、もう、約束は消えてしまった。



