唇を強く、かみしめた───そのとき。 ポケットに入れていた、携帯がぶるる、と震えた。 私は、それを取り出すと確認なんてしないで、携帯を耳に押し当てると─── 『どこほっき歩いてんだアホゆり!』 皐月くんの、声がした。 『っ、どこにいるか言えっ……今から行くから!』 荒らげるような、皐月くんの声に───押しとどめていた、涙があふれてくる。 「……う、っく……ぁ、うぅう……」 なんで、なんで。 私たちは幸せだったのに、あたらしいお父さんなんていなくなって、幸せだったのに……っ!