信じたくなかった。
信じたくなかった。
嫌だ、嫌だ、嫌だ……っっ。
するりと、涙が零れ落ちそうになって私は思わず口をつぐんだ。
お父さんに、逢えなくなる?
そんなの……そんなのっ!!
「どうにもならないんですかっ……お金ならいくらだって出しますっ!
子供がいるんです、まだ小さい……っ、
もうすぐ生まれてくる赤ちゃんだっています、妻だっている……っ!!
どんなことしてくれても構わないから……っだから!」
涙が、止まらなくなる。
お父さんの、あんな悲痛な声を、初めて聴いた。
普段、あんなに気丈にふるまっているのに、こんな、こんなところで、お父さんの弱さを見るなんて、思ってもみなかった。
「まだっ……!
まだ、死ぬわけにはいかないんだっ……!!」
「っっ……」
ぎゅうっと胸を締め付けられるような、痛さに私はこぼれる涙が止まらなかった。



