隣で、お母さんがすやすやと寝ていて、左を見ると、布団はもぬけの殻。
……お父さん?どこ……?
眠たい目をこすりながら、ゆっくりと起き上がる。
寝室のドアを開けて、見ると二階からかすかに光が漏れているのがわかった。
物音を立てないように、忍び足で上る。
そして、最後の一段で立ち止まって覗いてみると、一番左奥───お父さんの書斎に、光が漏れていた。
「……そうですか」
お父さんの、声がした。
その声はまるで何かにせめぎ合っているような───絶望に満ちた、声。
「もう……どうにも、なりませんか」
その言葉は、私の胸にぐさり、と突き刺さった。
……え?
どうにも、ならない……?
どうにも……お父さんが、もう。



