だんだんと、ぼやけていた視界がはっきりしていく。
滲んだように見えた、輪郭がはっきりと───姿を現す。
それに気づいた皐月くんは、驚いたように目を見開いたあと、
私に触れていた温かな手をすっと離した。
「……あ、れ……皐月くん」
ゆっくり、私が体を起こすと皐月くんは、
「こんなとこで寝たら風邪ひくよ」
と言って、じっと見つめる私の視線を避けるように、顔をそむけた。
その行動に、ずきっと心が痛くなった気がして。
「……あ、ごめんね」
見られたくない。
自分が、悲しんでいるところなんて、皐月くんにだけは絶対に。
私は、その思いに突き動かされるように慌てて立ち上がった、そのとき。
「───きゃっ」
とん、と椅子の足に自分の足を引っ掛けて、バランスを崩して───
ぐらり体が大きく傾いて、あ、落ちる、と思わず目をぎゅっとつむって。



