ふわり、と何かが触れたような気がした。
その温かさは、まるで───お父さんの、不器用に私の頬に触れる温かさに似ていて。
……だ、れ……?
重い瞼をうっすら開くと、さらりとこぼれる黒髪が目にはいる。
ぼやけた視界の中で、私の頬を触れるその人の表情は───あまりにも、苦しそうで。
何かに耐えているような、寸前で押しとどまっているような表情。
そうだ、この黒髪は……、
「……さ、つき……くん」
私が、そう口にすると、一瞬私に触れていた冷たい手が震える。
そして、ますます苦しそうに顔をゆがめながら、言うのだ。
聞き取れないほどの、掠れた低い声で。
「……そんなこと、言われたら……、
ゆりのこと、諦められなくなるよ……?」



