また、まただ。
あの時も───皐月くんが風邪をひいて、寝言で私の名前を囁いたときも……同じくらい、心臓が痛くなって。
「じゃ、行くよ」
「あ……うん」
皐月くんは小さく小首を傾げて、私の頭をぽんぽんと叩くと、そのまま歩いて行ってしまう。
どく、どく、どく。
心臓が、痛いくらいに脈を打つ。
どうしよう、どうしよう。皐月くんの顔が、見れなくなってしまう。
また、皐月くんのことを思い浮かべるたび、顔が赤くなる。
「……この痛みは、何……」
ぎゅうっと、胸元を握りしめて俯いた、そのとき。
「白井さん、持ってきたよ」
後ろから、ドアの開く音と爽やかな声が聞こえて私はあわてて振り返った。
しっかりしなきゃ……テストだって、あるし、実行委員だってあるんだ。
落ち着け、落ち着け私。
そう言い聞かせながら、ちらりと皐月くんが歩いて行ったほうを見たけれど、そこに皐月くんの姿はなかった。



