弟の翔太は、幼稚園に通う5歳。
母は、外資系の秘書をするバリバリのキャリアウーマンだ。
3人で住むには少しばかり広い家で、
母は仕事が忙しく、1週間家に帰ってこないなんてざらにあるから、実質この家に暮らしているのは私と翔太の2人、ということになるんだろう。
長い黒髪を束ねて、上のほうで縛ると、私は朝食の準備に取り掛かる。
小学校のころから、一人でいることが多かったから、料理は得意なほうだ。
味噌汁とちょうど炊けたごはん、自分でつけたお漬物をテーブルに乗せて、
よろよろとした足取りで座る母に、コーヒー、
翔太に牛乳を渡してやる。
こんな忙しい家族だけれど、必ず家にいるときはみんなで食べる、それがルールだった。



