*** 『また、行くの?』 父の、背中が見えた。 その大きな背中は、小さい私にはとても堂々として、凛として見えて。 じっと見上げていると、ぴたり、と足を止めて───父が、いつもと変わらない不機嫌な顔で、こちらを見た。 『……ああ、仕事だ』 『……いつ、もどってくる……?』 『なんとも言えない』 嘘つき。 嘘つき。 本当は───しごとじゃ、ないんでしょう。 おかあさんは、生まれてくるあかちゃんにかかりきりで、きっと知らない。 でも私には、分かった。