「……はい」
ゆりが、震える声と同じくらい手を緊張で小さく震わせながら───すっと俺の前にスプーンを差し出した。
……あー、やっぱり誰にも渡しなくない。
こうやって、ゆりを照れさせるのも、からかうのも、俺だけでいいのに。
ゆりに、嫌われたら……どうしよう。
不安が一瞬、胸をかすめる。でも、さっきまで勝っていた嫌われたくないって気持ちよりも、今はゆりを誰にも渡したくないって気持ちのが上だった。
「ねえ、手が震えてる」
「っだって、皐月くんがっ」
「俺が?」
「……何でも、ない」
あーどうして、こいつは俺の心をこんなにかき乱すんだ。
でも歯止めがきかないのは、俺のせいじゃなくって……ゆりが、可愛すぎるから。
「食べにくい」
「っさ、ささささ……っ」
俺は、そういってスプーンを握っていたゆりの手を上から重ねて、
自分の口にスプーンを持っていく。



