やばい、可愛すぎ。


そう思うと、唇をかみしめることしかできなくて。



俺はそのまま、足の向きを変えて───階段を下りていく。


口の中は、鉄の味がじんわりと滲みだしていて不快で不快でしょうがなかった。



嫌だ、嫌だ……ゆりを誰かに渡すなんて、絶対に。


でも───嫌われたくない。


無理やり割って入って、もしゆりが水瀬くんのことを好きだったら?


そんなの、俺がただ邪魔者なだけ。



そんなことが頭の中を駆け巡って、苛立ちが収まらない。

もやもやする、ずっと消えない。



何事もなかったかのように、俺はいつもように無表情を作ってリビングに入った。


「あれ?ゆりは?」


「……さあ」


一番最初に話しかけてきたのは、教科書を片手に高梨に教えているコナツチャンだった。


ゆり、という言葉を聞くだけでずきっと杭を打ち込まれたみたいに、痛みが広がる。