やばい、可愛すぎ。


ドアを開けると、冷たい空気がまとわりついてくる。

思わず顔をしかめそうになった。


物音一つない、それが逆に不気味だった。


俺ははやる気持ちを抑えて、ゆっくり足音を立てないように階段を上っていく。


先に、ゆりのさらりと音が聞こえてきそうなほど真っ直ぐに伸びた艶やかな黒髪が見えた。


そして、小さく話し声が聞こえてくる。


耳を澄ましても途切れ途切れにしか、聞こえてこない。くそっこんなところで、立ち止まるなんてらしくない。


ばっと出てって、何食わぬ顔でゆりを連れてけばいい、そうだろうが。


なのに───心のどこかで、見たくないって思ってしまう。



「……ここ、……よ」


そうミナセクンが言うと───すっと、ゆりの流れるような黒髪に触れて───





「っっ!!!」





───2つの影が、重なる。