むすっとしたまま、教科書を読み漁る。……全然、内容は入ってこないけれど。
すると、水瀬くんが思い出したように、
「あ、白井さんこの前貸したノートある?」
「……あ、うん……?どんな奴だっけ」
ゆりが歯切れ悪く返事をする。
なんというか、水瀬くんに話しかけられるたびに、ぼーっとしていたのが我に返っている、って感じ。
ゆりがそんなことすら忘れるのが、なんというか信じられないというか。
「あー水色のノートの……いいや、白井さん部屋に案内してくれる?
俺が行ったほうが手っ取り早い」
「分かった」
「っ……!」
そういって立ち上がる、ゆりの手を思わず掴んでしまった俺。
……引き留めて、なんていうか全然考えてなかった。焦った俺は、
「……俺が案内するから、ゆりは座ってなよ」
と、口走ってしまった。そして、その言葉に反応した水瀬くんが眉を寄せながら、
「なんで御影くんが案内するわけ?ここは白井さんの家なのに」
……あ、やば。



