固まったままの、私を水瀬くんは一瞥してそれから、大きくため息をついた。
さらり、と頬にかかるブラウンの髪をかきあげて、面倒くさそうに目を細めた後───
「もう、止めた」
「は?」
止めるって、───というか水瀬くんの口からそんな乱暴な声が出るなんて、と私は目を疑ってしまう。
「いい人ぶるのも、頼れる人を演じるもの、もうやめた」
「水瀬くん……?」
キャラが、変わってないですか。
「告ったのに、それが冗談かなにかだとでも思ってるの?」
「え、あ……いやその」
水瀬くんが、視線を泳がせる私に苛立ちを隠しきれていない様子で、
「もういい。
このまま何もしないでアイツにとられるなんて、悪いけど嫌」
水瀬くんは、そういって立ち上がると───いきなり、ぐいっと私の腕を引っ張った。



