思わず、水瀬くんのほうを見てしまった。
その表情は、皐月くんを思わせるほど余裕に満ちた笑みで、私はますます言葉を詰まらせてしまう。
「……皐月くんみたいなこと言わないで」
「……」
私が苦し紛れにそういうと、水瀬くんは黙ってしまった。
どうしたんだろう?
顔を伏せた水瀬くんから、表情を読み取ることはできない。
「言わないで」
「……水瀬くん?」
すっと、水瀬くんが顔を上げる───その表情は、さっきみたいに余裕のあるものじゃなくて、
ただ、切なそうに眉を寄せて寂しそうにすらみえる。
「俺の前で、アイツの名前言わないで」
アイツ───それは、もしかして皐月くんのこと。



