ちょうど、教室のドアまできて、水瀬くんがドアに手をかけた、そのとき。


「きゃあっ皐月くんだわ」


「今日は白百合姫と一緒じゃないんだね」


「相変わらずかっこいいー」


皐月、という単語に私の肩がびくりと上がる。


ちらり、と横目で廊下の先を見てみると、眠そうにあくびを漏らしながら歩いている、皐月くんと高梨くんの姿が。



しばらく、目が離せなくなって見ていたら、

皐月くんもこちらに気付いたのか、こっちをじっと見ている。


それから、私の隣に視線を送って、眠そうにしていた顔から、一転して物凄い不機嫌顔に。


……え?



隣を見ると、水瀬くんがとても優越勘に浸ったような表情で、皐月くんにひらひらと手を振っている。



聞こえはしないけれど、たぶんちっと舌打ちをした皐月くんは、

さっさと自分の教室へはいって行ってしまった。