*** 遠ざかっていく、背中。 その背中は、いつも見ているはずなのに───どこか、知らない人の背中のようだった。 もし、ここで何も言わないで、口をつぐんで見送ってしまえば、 きっと───後悔する。ずっと、ずっと後悔したまま。 私は、どうしても振り向いてほしくて。 手に握った、それをその背中めがけて投げつけた。 それは空しく、とん、と音を立てて地面に落ちていく。 そして、 彼が───振り返る。