『ゆりのことが、好き』



あの時の、今までに見たことがないほどの、優しい笑みで言ってきた皐月くんの表情が、頭から離れない。



聴きたいことだって、たくさんあるのに。


だ、だってあんな唐突に言われて、平常心でいろって言うほうが、無理っ。



「あああもうっ……!

 
 勉強に集中しなきゃいけないのに……」



考えれば考えるほど、頭の中にそのことがいっぱいになって、パンクしてしまいそうだった。


もう、今日はご飯作ろう。うん、そうしよう。


そうしたら、ふっとした瞬間に離れてくれるかもしれないし。


髪を束ねていたシュシュを外して、ドアを開けた、その瞬間───







「あ」



皐月くんが、眠そうな目をこすりながら小さく呟いているのが、見えた。