「……とこ」
「へ?」
ますます恥ずかしくなって、顔をそらしながら、俺は言う。
「……お母さん、とこ」
そういった瞬間、ゆりの顔がぱあっと明るくなったのが目に見えて分かった。
……うわ、なんかすごい恥ずかしい。
赤くなっていく顔を見られなくなくて、すっと顔をそらす。
分かったら、もういいでしょと話を打ち切ろうとゆりのほうを見ると、今度は難しそうな顔をして、顔をゆがめている。
今度は、なに。
「皐月くん、熱は下がったの?」
「はあ?別に測ってないけど」
「なんか足元もふらふらしているし、顔も赤い」
「別にこれくらい大丈夫だって」
俺がそういうと、ゆりは怒ったように眉を吊り上げて、
「風邪の引き際はちゃんと気を付けて、最後までしっかり治さないとっ」
「会いに行けって言ったのはお前だろうが」
「会いたいって言ったのは皐月くん。でも、私はちゃんと直ってから会ってほしいの」



