「そりゃ、白百合姫だよ」
授業が終わり、用具を鞄に入れている最中、高梨は興奮気味にそういった。
「あれが?」
机から数学の教科書を取り出して、いれようとしていた手が止まる。
高梨はにやにやしながら俺のところへ寄ってくると、
「ちょーラッキーじゃん!
白百合姫ってあんまり人と口きかないし、男としゃべるなんてもってのほかなんだぜ」
「……うっざ。近寄んなよキモイ」
「うわーいいなー白百合姫と話せるなんてー」
「はいはい、うらやましいだろー」
「オマエもっと、喜べよなんだそのうっすい反応」
困っちゃうのよねー嫌だわぁ、最近の若い子はぁと、おばさん口調で俺の肩を
ちょんちょん叩く高梨がうざくて、無視しながら下駄箱に向かう。



