怖かった。
ずっと、怖くてたまらなかった。
誰かに寄りかかりたくて、誰かを頼りたくてでも、頼れなくて。
ずっと我慢していたものが、容量を超えたコップの水のように溢れ出していく。
「本当は……っ!
忘れてなんてないっ、ずっとずっと覚えてる……っ」
「うん、分かってるよ」
「一度でいいから……皐月って、呼んでほしかった……っ」
「うん」
支えきれなくって、俺はゆりの腕にしがみついてしまう。
堪えようとしても、頬を伝う涙を止められることができなくなってしまった。
ゆりは、優しく俺の頭を撫でながら抱き寄せてくれた。
その香りは、まるであの時のお母さんみたいで───
「本当は、一緒に……っご飯、食べたかった……一緒にテレビ、見たかった……っ!
ケンカしたり、したかった……っっ!
でもっっ、でも……っお母さんに、また───誰って聞かれるのが怖くて、
もう戻らないんじゃないかって、思うたびに心が壊れそうに痛くてっ……!」



