すっとゆりが、俺の頬に触れる。
温かなぬくもりが、そっと頬を包んで───ゆっくり俺の顔を上げて、
「……どうして、そんなに悲しい顔をするの」
「───っっ!」
言葉を、失ってしまう。
包まれた両手を振り払うこともできないまま、俺はじっと見つめるその透き通った瞳から、目が離せないままで。
「ねえ、皐月くん……聞いてくれる?」
ゆりはそっと目を伏せて、思い出に浸るかのように遠い目をしながら唇を動かした。
「私ね、昔……とても大切な人に酷いことを、言ってしまったの」
「……」
「それはね、私の父親と呼ばれる人で」
ゆりの口から父親───と聞くのは、初めてだった。



