「……ん」 俺は、そいつの手からクッキーをもらう。 一瞬、そいつの細くて白い指が俺の手と触れる。 「……っ……」 その瞬間、彼女の凛とした表情がこわばったような気がした。 触れた温かなぬくもりは、すっと離れていく。 不思議に思って顔を覗き込もうとした、そのとき。 「───次は、ちゃんと人のこと考えてあげてください」 すこし早口で、まくしたてると彼女は───さっきよりも、 揺らいだ足取りで、教室を後にしてしまった。