呼んでほしかった。
もう一度だけでいいから……たった、一回だけでいいから。
皐月って、呼んでほしかった。
それが、たとえどんな見返りのあるものであったとしても。
「……っっく、そ……っ」
押さえつけても、俺の視界がにじんでいく。
涙なんて流す資格、俺にはないのに。
我慢をすればするほど、自分に言い聞かせるほど、せき止めていたものが流れ出していく。
「さん、……おかあ、さん……っ」
もう一度だけでいいから、呼びたかった。
お母さんって、呼びたかった。
振り返って───たとえ、自分の名前を呼んでくれなかったとしても。
それでも、お母さんって。



