「あの時、隣にいたあの子……」
「……」
私はぐっと言葉を飲み込んで、胸からふつふつとこみ上げてくるものを押さえる。ぎゅうっとスカートを握りながら。
ゆらゆらとカフェオレの水面下で浮かぶ私の顔は、とても情けなく、泣きそうな顔をしているのが見えた。
「……あの子ね、まだ私が病院にいたころによく来たのよ。
名前を聞こうと思って、聞いてみたけれど……結局、教えてもらえなかったわ。
私はきっと怒らせてしまったのでしょうね。
どうしてだか、その子を見ているととても懐かしい気持ちになって、話してみたいって思うのよ。
けれど……うまく話せなかったわ……そのうち、その子も病院に来なくなってしまって」
「っっ……」
───おいて、行かないで。……お願いだから、……わすれ、ないで。
あの日、初めて会った日。
ソファーで寝ていた、皐月くんがつぶやいていた言葉を思い出す。



