「……あら?私の名前」
「教えてもらいました、高梨くんに」
「……たかなし……ああ、あの面白い子かしら」
八千代さんは思い出したかのようにクスクス笑いながら、目に浮かぶ涙を取る姿は、
本当に皐月くんにそっくりで、私は複雑な気持ちに陥ってしまった。
「あの……貴方の名前を教えてくださるかしら?」
「あ、私はゆりです。白井ゆり」
いつの間にか伏せていた顔を上げて、そういうとゆり、そう素敵な名前ねと笑ってくれた。
綺麗な人だな、というのが私の感想だった。
ところどころのしぐさや、言葉遣いはとても丁寧で、優しい人なのだと見ただけでもわかる。
……だから。
だから、こそ。
だからこそ、この目の前にいる人が───皐月くんを忘れてしまったのか、と疑いたくなってしまった。



