皐月くんが言わないから、だんだん心配そうに顔をゆがめる女性に隣にいた翔太が、


「えっとね、こいつはサツ、」



そう、言いかけた瞬間───






「───言うなっっっ!!!」









ざああああああっと突き刺して、肌を濡らして制服の中に滑り込んでくる、

不愉快な雨の音を、すべて掻き消してしまうほどの───


───皐月くんの、声が響き渡った。



皐月くんは、苦しそうに、泣く寸前の堪えたような表情で───言った。




「どなたか、存じ上げませんが───俺は知らないです」