その表情をみて、私はどくん、と鼓動が小さく脈打つ音が聞こえる。……あれ、なんで私こんな。
戸惑う私をよそに、
「……もうとっていいよ」
いつも通りの皐月くんの落ち着いた声が聞こえて、私は真っ暗になっていた正体のそれを、見る。
さっき皐月くんが脱いでいた、ブレザー。
「ん、返して」
「……ぁ、うん」
私に投げておいて、とか、いきなり何するの、とか言う言葉はいくらでもあったのに。
私は、何も考えられなくなって───そのまま、それを皐月くんに渡す。と、そのとき。
ひんやりと、冷たくて心地いいぬくもりが、私の指に触れる。
「───っっ」
ぱっと私は渡した制服から手を引っこ抜いてしまう。



