え、と小さく声を漏らしそうになった。
あの余裕そうに微笑む口元も、好戦的な瞳も、冷静に見えるきりっとした眉も。
すべてが、崩れて───皐月くんは言葉を失っていた。
「さ、皐月く」
私が何か言おうと口を開いた瞬間───突如、私の目の前が真っ暗になる。
「わ、ふ……っな、なにっ」
「……ちょっと黙って」
真っ暗な視界の向こうから、皐月くんの掠れて低い声が聞こえてくる。
その視界の隙間から───ちょっとだけ、皐月くんの表情が見え隠れしていて。
皐月くんは、はあ……と大きくため息をついた後、顔を伏せて髪をくしゃっと握りながら、
口元をぐっと結びながら、険しい表情で───けれど、頬は赤いまま。
「…………不意打ち」
と、小さくつぶやいた。



