何かと思って、声のするほうへ首を傾けると───
「───あっっ!白百合姫じゃんっっ!」
「っっ……!!」
いきなり私のほうへと、誰かが飛び込んできて、さあっと血の気が引いていくのがわかる。
声も出なくなって、きゅっと目をつむって……あれ何も、起きない。
「近寄るな、高梨」
低い、皐月くんの声がして───ゆっくりと、目を開くとそこには、
確か皐月くんの友達の……高梨くんの襟を、皐月くんが引っ張っているという図だった。
「あれ、高梨くんと皐月くん。どうしたの?」
私がそう聞くと、襟を引っ張られていた高梨くんが、
「ちょっ聞いてよ、白百合姫皐月が───っむぐっ」
そこまで言いかけると、いきなり皐月くんが横から手を伸ばして、高梨くんの口をふさいでしまった。



