『これ、一応作ってきたから』
そういいながら、赤くなった顔を隠そうとむすっと眉の間にしわ寄せながら、
俺に渡してきたことを思い出す。
一応だなんて。
あいつ、お弁当箱詰めるときすごい真剣な顔して、詰めてたくせに。
しかもお弁当箱見て、うんうん頷いてたし。
……きっと、俺がちらっと見てたことなんて知らない、ゆりは、
『適当に作ったから、あんまりおいしくないだろうけど』
なんていったときは、もう可愛すぎて吹きそうになった。
「うわっ皐月さっきまで、険しい顔してたのに笑ってるし、キモっ」
「うるさい見んな死ね」
高梨が大げさにのけぞりながら、物珍しそうに目を細めて、口に手を当てている。



