「皐月く、」 水瀬くんの押しの強さに負けて、先導されてしまう私。 思わず後ろを振り返ってみると───え? 皐月くんが、下を向いたまま唇をかみしめているのが、見えた。 「見ないで」 固まる私の耳に、いつもの優しい声じゃなくって、低くいらだつような声が届く。 思わず、上を向くと優しい笑みを浮かべながら、首をかしげて、 「どうかした?」 「あ、ううんなんでも」 私の気のせい? ずり落ちてきた鞄をもう一度かけなおして、足を進めた───