前を向くと、いつも通りの優しい笑みを浮かべながらこちらに、小さく手を振ってくる水瀬くんが見える。


「……チッ」


「今舌打ちしなかった、皐月くん?」


「気のせい」


皐月くんはやたらと不機嫌顔を浮かべながら、なぜか水瀬くんを睨みつけている。


水瀬くんのところまでやってくると、


「おはよ、白井さん、御影くん。

 相変わらず御影くんは、人が逃げそうなほどの悪人面だね」


「お前にしかこんな顔しないっての」


「えー酷いな、ちっとも傷つかないけど」


……あれ?


なんだか、水瀬くんってこんな爽やかな笑みでこんなこと言う人だったっけ。