ゆりはしばらく、ぅうとうなって視線を上へ、下へ、横へそらした後、
恥ずかしそうに、口を尖らせながら小さな声で───言う。
「さ、…………さつ、きくん」
「ん」
ほら、やっぱり呼んでくれる。
俺が返事をすると、ゆりは
「も、もういいでしょうっ?帰るよ、翔太も待ってるんだから」
真っ赤な顔でずんずん足を進めて行ってしまう。さて、じゃあ最後の仕上げに入りましょうか。
俺はすっとゆりの後ろへ走り出して───彼女の手に持っていたお弁当を取り上げる。
「か、返してっみか、皐月くん私にいらないって言ったじゃない」
「あ、嘘」
俺がそういうと、ゆりはきょとんとした顔で俺を見上げる。