くすくす笑ってしまう俺に、白井はむすっと赤い顔のままお弁当を下げて、俺の横を通り過ぎようとする。
「冗談だって、怒った?」
「怒ってません気にしないで」
「怒ってるくせに。素直じゃないやつ」
そこまでいうと、すたすた歩き去ろうとしていた足をぴたりと止めて、
いきなり後ろを振り返ったかと思うと───
「───っっ、だいたい御影くんは、」
「皐月」
無理やりさえぎって、俺はもう一度口にする。
「皐月って呼んで、ゆり」
「なっ」
白井───ゆりは小さく狼狽したように視線を揺るがせる。
分かってる、こいつは口下手で素直じゃなくて───どうしようもないくらい、優しいから。
だから、きっと呼んでくれるって分かってて意地悪する俺は、そうとうたちが悪い。