そんなあほ面していると、ますますあほにみられるよ、と言おうとして───
「っえっ!?
おまっ、白百合姫知らないの!?」
くそでかい声で、廊下に響き渡ってやまびこみたいになっていた。
……恥ずかしいったらありはしない。
「……知らない、つかうるさい。黙れ」
本気でこいつ口ふさいで、空き教室にでもぶち込んでやろうかと思うほど、
「知らないの!?知らないの!?」
と、ウザイほど絡んできやがる。
「あーちょっと黙れ、うるさいから」
体をぐいぐい押しつけてくる高梨の足を踏んづけながら、
ちらり、ともう一度校門を見る。けれど、そこには〝シラユリヒメ〟は見当たらなかった。



