「───っっ」 違う、違う。 誰にも、渡したくない。 誰にも触れさせたくない。 あいつを───水瀬なんかに、渡したなくない。 嫌だ、そんなの。 絶対に───嫌だ。 かっと心の奥が熱くなったような気がした。 だめだって、分かっていたはずなのに。 裏切られる、忘れられる───大切な人を失った痛みを、また味わうかもしれないのに。 「っっ、くっそ」 もう、そんなことは考えられなくなっていた。 だって、気づいたときにはもう───走り出していたから。